ほのかにアートな東京ライフ。都内でわさわさ働くまりもの日記。趣味は海洋生物、フランス系芸術、音楽、写真。Copyrigt-©lamusique All Rights Reserved. lamusique@excite.co.jp


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白桃とデラウェア

近所にあるわりと大きめなコンビニで白桃とデラウェアを購入し、帰宅してこの二つ果物を並べたところでふと幼い頃の思い出がよみがえった。私はその昔叔母がしてくれたように、皮をむいた桃をスライスしてお皿に盛り、デラウェアは一つ一つの粒を房からはずし、しつこいほどゴシゴシと洗ってからこれまた別のお皿に盛り、これらをしばし眺めてからゆっくりと食べた。

私は、父の仕事の関係で幼少期のほぼすべてを海外で過ごしたが、年に2度ほど許される一時帰国の折には当時存命だった母方の祖父の家に帰省していた。フライトはたいてい夜中着。空港から車に乗り、ネオンでピカピカする街中を疾走して祖父の家に到着すると、玄関先にはきまってステッキをもった祖父がたばこを吹かせながら私たちを待ってくれていた。祖父にしてみれば、素直でかわいい末っ子だった母とその子供たちがまた格別に可愛かったらしく、どんなに遅くなろうと待ちに待った帰省に目をなくならんばかりに細めて迎えてくれた。

庭を抜けて家の玄関を開けると、やわらかいイ草の匂いに包まれる。暖かい明かりの中にはいつも叔母がいて、普段は潔癖症で外出着のままだと触らせてもくれないのに、この時ばかりは飛び掛らんばかりに駆けよっていっても、ひたすらに抱きしめてくれた。

「おかえり。はよあがり、あがり。手洗っておいで。」とせっつかれ、あっという間に部屋着に着替えさせられて(潔癖症だから。笑)食卓につくと、そこにはいつもきりっと冷やされた果物が用意されていた。「あつかったやろう。それ食べたらお風呂入ってねるんよ」――。

桃はきまって花をあしらった透明のボール皿にスライスされた状態でこんもりと盛られ、デラウェアもまた同じ類の皿に粒粒の状態で盛られていた。(デラウェアについては一度、「どうして房のまま出してくれないの?」と聞いてみたことがある。これには「一粒一粒しっかりと洗わないとだめなん。」との返答があり、いかにも叔母らしいなあと納得した。) 久方ぶりに見る日本の果物が嬉しくて、なんだかもったいないような気持ちでチビチビと啄ばみ、横にいる母もまた同じ皿をかかえて嬉しそうにしているのを見ると、幼いながらもようやく日本に戻ったというつかの間の安堵に身を浸していたのを思い出す。

果物の季節からいって、やはり今頃のことだったのだろうか?実際のところ、もはや帰国時期など定かではないが、本日たまたま購入した果物たちに思わぬノスタルジックな夏夜を提供してもらったと感慨深い気持ちになった。白桃とデラウェア――私にしてみれば日本を象徴する素敵な果物なのだ。
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by lamusique | 2009-07-09 02:00 | たわいないお話